こんにちは。ROCKSの澤村 英希です。
トレーニングに関する海外を中心とした研究論文と、ROCKS会員様の実データをエビデンスとしたブログを発信しています。少し長くなりますがご覧ください。
「お腹の脂肪だけ落としたいんです。」
「二の腕だけ細くしたいんです。」
「太ももだけ何とかなりませんか。」
ROCKSに来られる会員様から、こうしたご要望をいただくことがあります。気になる部位をピンポイントで細くしたい。その気持ちは、痛いほどわかります。
わたし自身、痩せ型なのにお腹だけポッコリしていた時代がありました。お腹の脂肪だけ落とせないかと、何度も何度も思いました。脂肪吸引すら検討したこともあります。
しかし、運動によって特定部位の脂肪だけを狙い撃ちで落とすことは、現在の科学ではできないとされています。
まず、部分痩せに関する最も信頼性の高いエビデンスを紹介します。
2022年にHuman Movement誌に掲載された系統的レビュー・メタ分析(Ramirez-Campillo et al.)では、13件のランダム化比較試験(1,158名)を統合し、片側の腕や脚だけを集中的にトレーニングした場合の脂肪量を、反対側と比較しています。
結果、プールされた効果量は-0.03(95%CI: -0.10〜0.05、p=0.508)。統計的に有意な差はなく、研究者は「部分痩せの効果がないことは普遍的であり、対象者やプロトコルに依存しない」と結論づけています。
シドニー大学のFuller博士も、12週間の腹筋トレーニングプログラムと食事改善のみのグループを比較した臨床試験を引用し、腹部の脂肪減少に有意差がなかったことを報告しています(University of Sydney, 2023)。
さらに同博士は、遺伝子が脂肪分布の約60%を決定していると述べています。
では、なぜ部分痩せができないのか。脂肪が燃える仕組みから説明します。
体脂肪は、脂肪細胞の中にトリグリセリド(中性脂肪)として蓄えられています。
運動でエネルギーが必要になると、カテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)などのホルモンが血流を通じて全身の脂肪細胞に作用し、脂肪を分解します。
分解された脂肪酸は血中に放出され、エネルギーを必要としている筋肉に運ばれて燃焼されます。
つまり、「腹筋運動をしたからお腹の脂肪が優先的に使われる」のではなく、
「全身の脂肪細胞からまんべんなく動員される」
というのが体の仕組みです。
ここまでが「部分痩せはできない」という事実です。しかし、もう一つ知っておくべき重要な事実があります。
「脂肪が落ちにくい部位」は存在するということです。
1989年にJournal of Clinical Investigation誌に掲載されたWahrenbergらの研究は、この現象を分子レベルで解明した画期的な論文です。
脂肪細胞には、脂肪分解を促進する「β受容体」と、脂肪分解を抑制する「α2受容体」の2種類のアドレナリン受容体が存在します。
カテコラミンが脂肪細胞に作用したとき、β受容体が優位であれば脂肪は分解されやすく、α2受容体が優位であれば脂肪は分解されにくい。この受容体のバランスが、体の部位によって異なるのです。
研究の結果、腹部の脂肪細胞はβ受容体の密度が臀部の2倍であり、カテコラミンに対する脂肪分解感度が10〜20倍高いことがわかりました。
一方、臀部や太ももの脂肪細胞はα2受容体の活性が高く、脂肪分解に対してブレーキがかかりやすい構造になっています。
この研究は「腹部とお尻・太もも」を比較したものです。腹部の脂肪はお尻や太ももよりは燃えやすい。しかし、顔や胸、腕といった上半身の部位と比べると話は変わります。
男性における腹部(おへそ周り)や、女性におけるお尻・太ももは、全身の中でも特にα2受容体の影響が強い「最後の砦」のような部位です。
つまり、脂肪の落ちやすさには部位ごとのグラデーションがあり、体全体の中での相対的な位置づけで見る必要があるのです。
さらにこの研究は、この部位差が女性においてより顕著であることを示しています。
女性の臀部の脂肪細胞では、α2受容体に対するアゴニストの親和性が腹部と比較して10〜15倍高く、脂肪分解がより強く抑制されていました。
2025年にiScience誌に掲載された大規模研究(2つのコホート、数百名規模)でも、女性の皮下脂肪細胞は抗脂肪分解性のα2A受容体の機能が亢進しており、脂肪分解の感度が男性の約50%であることが確認されています。
これが、女性のヒップや太もも、男性の腹部の脂肪が「最後まで残る」理由です。
遺伝やホルモンによって決まった受容体のバランスが、部位ごとの脂肪の「落ちやすさ」を支配しているのです。
わたしの場合も、コンテストに向けた減量中に肩や腕まわりは皮一枚の状態まで脂肪が落ちたのに、おへそ周りの脂肪はまだしぶとく残っていました。ここからさらに減量をしてようやく、おへそ周りも落ちていったのです。
体重が減っていくと、お腹などの残りやすい一部分が逆に目立つようになります。
この中途半端な時期が一番見た目が悪くなりますが、ここで諦めずに辛抱強く継続することが大切です。
受容体のバランスがどうであれ、全身のダイエットを続ければ、しぶとい部位の脂肪もいずれ必ず減っていきます。
なお、エステティックの施術や美容医療の技術については、わたしの専門外なのでこの記事では言及しません。それぞれの分野にはそれぞれの知見があり、わたしが語るべきはトレーニングと食事による体作りの話です。
わたしが現場で確信を持って言えることは、筋トレと適切な食事管理を継続すれば、全身の体脂肪は確実に減っていくということ。そして全身の脂肪が減れば、気になっていた部位も必ず変わるということです。
遠回りに見えるかもしれませんが、全身のダイエットこそが、気になる部位を変える最も確実な方法なのです。
これが実現できるのがROCKSです。
ROCKSでその変化を一緒に楽しみましょう。
お問い合わせお待ちしております。
お問い合わせはこちらのフォームからhttps://gym-rocks.com/counseling/
【参考文献】
・Ramirez-Campillo R et al. “A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis.” Hum Mov. 2022;23(3):1-14.
・University of Sydney / Fuller N (2023). “Spot reduction: why targeting weight loss to a specific area is a myth.”
・Wahrenberg H et al. “Mechanisms underlying regional differences in lipolysis in human adipose tissue.” J Clin Invest. 1989;84(2):458-467.
・Arner P et al. “The nature of sex differences in catecholamine-induced lipolysis in subcutaneous fat cells.” iScience. 2025.
・Richelsen B. “Increased alpha 2- but similar beta-adrenergic receptor activities in subcutaneous gluteal adipocytes from females compared with males.” Eur J Clin Invest. 1986;16(4):302-309.
・Lafontan M, Berlan M. “Fat cell adrenergic receptors and the control of white and brown fat cell function.” J Lipid Res. 1993;34(7):1057-1091.
・Horowitz JF. “Fatty acid mobilization from adipose tissue during exercise.” Trends Endocrinol Metab. 2003;14(8):386-392.
