こんにちは。ROCKSの澤村 英希です。トレーニングに関する海外を中心とした研究論文と、ROCKS会員様の実データをエビデンスとしたブログを発信しています。少し長くなりますがご覧ください。
ROCKSの女性会員様から、繰り返し聞く言葉があります。
「気づいたら眠剤を飲まなくなっていました。」
最初にこの報告を受けたときは驚きました。入会の目的はダイエットや体力向上で、睡眠の改善を期待して来られた方ではなかったからです。ところが筋トレを始めて数週間から数か月、本人も意識しないうちに、寝つきがよくなり、夜中に目が覚めなくなり、朝の目覚めがすっきりしている。そしてある日ふと気づくと、ベッドサイドに置いていた眠剤に手を伸ばさなくなっていた、と。
これが一人や二人の話であれば個人差で片付けるところですが、同じ報告が複数の女性会員様から寄せられています。偶然ではなく、体の中で何かが変わっていると感じて調べました。
2018年にSleep Medicine Reviews誌に掲載された系統的レビューでは、筋トレ(レジスタンスエクササイズ)が睡眠に与える影響を調べた13件のランダム化比較試験が分析されています。その結論は明確で、継続的な筋トレは睡眠の質を全般的に改善し、中でも「睡眠の質(主観的な満足度)」に対して最も大きな効果を示したと報告されています(Kovacevic et al., Sleep Med Rev, 2018)。
さらに注目すべきは、この研究が筋トレの副次的な効果として、不安やうつ症状の改善も同時に確認している点です。眠れない原因の多くは、心理的な緊張や不安にあります。筋トレがそこにも作用しているということです。
2024年にPLOS ONEに掲載されたネットワークメタ分析では、若年〜中年層(非高齢者)を対象に、さまざまな非薬物的介入の睡眠改善効果を比較しています。27件のRCTを統合した結果、睡眠の質を最も効果的に改善した介入は「筋トレ(レジスタンストレーニング)」でした(PLOS ONE, 2024)。
有酸素運動でもヨガでもなく、筋トレが最も効果的だったのです。
では、なぜ筋トレで眠れるようになるのか。
現在、研究で示されているメカニズムはいくつかあります。
1つ目は、体温の変化です。筋トレによって深部体温が一時的に上昇し、その後、数時間かけてゆっくりと低下します。この体温の下降が、脳に「眠りの準備ができた」というシグナルを送ります。これは入浴後に眠くなるのと同じ原理です。
2つ目は、成長ホルモンの分泌です。筋トレで強い負荷をかけると成長ホルモンの分泌が促されますが、成長ホルモンは深い睡眠(ノンレム睡眠のステージ3、いわゆる徐波睡眠)の時に最も多く分泌されます。筋トレが深い睡眠を必要とする身体状態を作り出すことで、睡眠の質が向上すると考えられています。
実際、2022年にInternational Journal of Environmental Research and Public Healthに掲載されたRCTでは、12週間の筋トレによってサルコペニアの高齢者の不眠重症度指数が有意に改善し(8.71→5.14、p<0.01)、同時にノンレム睡眠ステージ3(深い睡眠)の割合が増加したことが客観的に計測されています(de Sá Souza et al., 2022)。
3つ目は、自律神経と抗炎症作用です。同じ研究では、筋トレ後にIL-10(抗炎症性サイトカイン)が有意に増加しており、体内の慢性的な炎症が抑制されたことが示されています。慢性炎症は睡眠障害の一因とされており、筋トレが炎症を鎮めることで、結果的に睡眠の質が上がるという経路です。
眠剤(ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬)は、確かに入眠を助けてくれます。しかし、深い睡眠(徐波睡眠)を減少させることが知られており、睡眠の「回復効果」を弱めてしまいます。さらに長期使用は、反跳性不眠、認知機能の低下、転倒リスクの増加、そして依存性といった副作用が報告されています(Kovacevic et al., 2018)。
薬で眠ることと、体が自然に眠りに入ることは、まったく別のものです。
ROCKSの女性会員様が「気づいたら眠剤を飲まなくなっていた」と言う背景には、これだけの生理学的な裏付けがあります。筋トレが体温を上げ、成長ホルモンの分泌を促し、炎症を鎮め、不安を軽減する。その結果、体が自分の力で眠りに入れるようになる。
眠れないことで悩んでいる方に伝えたいのは、薬に頼る前に、まず体に負荷をかけてみてほしいということです。ROCKSで正しいフォームのトレーニングを体験してみてください。体は、驚くほど素直に反応してくれます。
さあ、次はあなたの番です。
これが実現できるのがROCKSです。
お問合せお待ちしています。
ROCKSでお会いできることを楽しみにしています。
お問い合わせはこちらからhttps://gym-rocks.com/counseling/
【参考文献】
・Kovacevic A et al. “The effect of resistance exercise on sleep: A systematic review of randomized controlled trials.” Sleep Med Rev. 2018;39:52-68.
・PLOS ONE (2024). “The effects of nonpharmacological sleep hygiene on sleep quality in nonelderly individuals: A systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials.”
・de Sá Souza H et al. “Resistance Training Improves Sleep and Anti-Inflammatory Parameters in Sarcopenic Older Adults: A Randomized Controlled Trial.” Int J Environ Res Public Health. 2022;19(23):15994.
・Yang PY et al. “Exercise training improves sleep quality in middle-aged and older adults with sleep problems: a systematic review.” J Physiother. 2012;58(3):157-163.
・Frontiers in Psychology (2024). “Optimal exercise dose and type for improving sleep quality: a systematic review and network meta-analysis of RCTs.”
・Journal of Clinical Sleep Medicine (2024). “Effects of different types of exercise on sleep quality based on Pittsburgh Sleep Quality Index in middle-aged and older adults: a network meta-analysis.”
