病院に行くか、ジムに行くか。その選択が10年後の体を変える

ブログ

こんにちは。ROCKSの澤村 英希です。
トレーニングに関する海外を中心とした研究論文と、ROCKS会員様の実データをエビデンスとしたブログを発信しています。少し長くなりますがご覧ください。

先日、ROCKSに通ってくださっている72歳の会員様と、こんな会話になりました。

「高齢者は医療費の自己負担が1割だから、みんなすぐ病院に行くんだよ。でも病院に行っても症状を抑えるだけで、体そのものは強くならないでしょう。わたしはジム代に使っているおかげで、病気知らずで病院にも行かない。どこにお金を使うかで、人生が変わると思うんだよね」

この方は娘さんに勧められてROCKSに通い始め、今では入会時よりも明らかに元気でたくましくなっています。

72歳にして、アクティブに毎日を過ごされている。

「病院に使うか、ジムに使うか。同じお金なのに、結果はまったく違う」

この言葉がずっと頭に残っていました。

感覚的には「そうだよな」と思うこの話を、今回は研究論文のデータで裏付けてみたいと思います。

日本の医療費の現実

まず、日本の医療費の構造を見てみましょう。

2023年度の日本の国民医療費は過去最高の48兆円に達しました。

このうち、65歳以上の高齢者の医療費は約28.9兆円で、全体の約60%を占めています(厚生労働省, 2025)。

一人あたりの年間医療費は、65歳以上が約79.7万円。65歳未満の約21.8万円と比べると、実に3.7倍です。

さらに、75歳以上の後期高齢者医療費は19.6兆円に達し、国民医療費全体の41%を占めるまでになっています。

2010年の12.7兆円から14年間で約1.5倍に膨らみました。

日本の医療制度では、75歳以上の自己負担は原則1割です。

つまり、10万円の治療を受けても自己負担は1万円。残りの9万円は公費と保険料で賄われます。

自己負担が少ないこと自体は素晴らしい制度ですが、「安いから行く」という構造が、医療費全体を押し上げている側面もあります。

ここで冒頭の会員様の言葉が重みを持ちます。

「病院に行っても症状を抑えるだけで、体は強くならない」。

治療は必要なものですが、治療だけでは「病気にならない体」は作れません。

運動する人は医療費が少ない ― 研究が示すエビデンス

では、運動と医療費の関係について、研究は何を示しているのか。

2023年にBMC Health Services Research誌に掲載されたシステマティックレビュー(Duijvestijnら)は、運動と医療費に関する複数の研究を統合的に分析しました。

その結果、運動習慣のある人はない人と比べて、年間の医療費が9.0〜26.6%低いことが明らかになりました(Duijvestijn et al., BMC Health Serv Res, 2023)。

アメリカのデータでは、運動習慣のある成人はそうでない成人と比べて、年間約1,500ドル(約22万円)の医療費が少ないという報告があります。

また、米国の医療費全体の約8.7%にあたる年間約1,170億ドル(約17兆円)が、運動不足に起因する疾病コストだとされています。

2024年にFrontiers in Public Health誌に掲載された中国の大規模研究(Liuら、CHARLSデータベース)では、60〜80歳の高齢者を対象に分析した結果、運動習慣のある高齢者は医療費が有意に低く、運動が医療費に対して「クラウディングアウト効果(代替効果)」を持つことが示されました。

つまり、運動に使ったお金が医療費を押し出して減らすという構造です(Liu et al., Front Public Health, 2024)。

オーストラリアの研究(Active Lives South Australia)では、運動ガイドラインを満たしている成人は、満たしていない成人と比べて年間一人あたり約1,393豪ドル(約13万円)の医療費が少ないことが報告されています。

病院では体は強くならない ― 「治療」と「予防」の根本的な違い

ここで考えたいのは、「治療」と「予防」の構造的な違いです。

病院は、すでに起きた病気やケガを治す場所です。血圧が高ければ降圧剤を出す。血糖値が高ければ薬を処方する。膝が痛ければ痛み止めを打つ。

いずれも症状を緩和する対処療法です。もちろんこれは必要な医療です。

しかし、薬を飲んでも筋肉はつきません。注射を打っても骨は強くなりません。

治療が終わっても、病気になりやすい体のままであれば、また病院に行くことになります。

冒頭の72歳の会員様が、まさにこの話をされていました。

ご主人が膝の痛みで整形外科にせっせと通っているのだそうです。

しかし、通院を続けても痛みが緩和されるだけで、膝を支える筋肉が強くなるわけではない。だからまた痛くなり、また病院に行く。その繰り返し。

「膝が痛くてウォーキングができないなら、プールで歩けばいい。水中なら膝への負担が少ない状態で筋肉をつけられる。体を強くすれば、そもそも整形外科に通わなくて済むようになるのに。病院代を払い続けるくらいなら、プールや運動にお金を使えばいいのに」

この言葉には、「治療」と「予防」の本質的な違いが凝縮されています。

病院は痛みを止めてくれますが、痛みの原因である「筋力の不足」は解決してくれません。

筋力をつけることでしか解決できない問題に、いくら治療費を注ぎ込んでも、構造的にループから抜け出せないのです。

一方、ジムでのトレーニングは「体そのものを変える」行為です。

筋トレは、高血圧のリスクを下げます。

ROCKSの過去の記事でもご紹介しましたが、270件のRCTを統合したメタ分析(Edwards et al., Br J Sports Med, 2023)では、筋トレにより収縮期血圧が平均4.55mmHg低下することが確認されています。

筋トレは、転倒予防にも直結します。

2021年のメタ分析(Claudinoら、J Clin Med)では、筋トレが高齢者の転倒リスクを有意に減少させることが示されています。筋力が維持されることで、バランス能力が向上し、転びにくい体になる。

72歳の会員様は「つまずきかけたが、こけずに踏ん張れた」ことが何度もあり、トレーニングの恩恵を感じておられます。

転倒による大腿骨骨折は、高齢者の寝たきりの主要原因のひとつです。

寝たきりになれば、医療費と介護費は桁違いに膨らみます。

2023年度の日本の介護保険費用は11.5兆円に達しています。

ジムで筋肉を維持して転ばない体を作ることは、この費用を個人レベルで回避することにつながります。

わたしの著書でも触れていますが、筋トレのメンタルへの効果も研究で確認されています。

睡眠の質の改善、気分の安定、認知機能の維持。薬に頼らずにこれらを得られる手段として、筋トレは非常に合理的な選択です。

「お金の使い方」を変えるという発想

72歳の会員様がおっしゃっていたのは、「お金の額」の話ではなく「お金の使い先」の話です。

月に数千円〜数万円の医療費を病院に払い続けるのか。それとも同じ金額をジム代に使って、病院に行かない体を作るのか。出ていく金額が同じなら、体が強くなる方に使った方がいい。

これはわたしが普段「時間割引率」の概念で説明していることと同じ構造です。

将来の健康という「見えにくい価値」を低く見積もり、今の症状の緩和という「目に見える安心」にお金を使ってしまう。

しかし、長い目で見れば、予防に投資した方が圧倒的にリターンが大きい。

もちろん、病院が不要だと言いたいわけではありません。

治療が必要なときは必ず病院に行くべきです。しかし、病院だけに頼る生活と、運動で体を整えたうえで必要なときだけ病院を使う生活では、10年後、20年後の体の状態がまったく違います。

72歳の会員様が「病気知らず」でアクティブに過ごせているのは、娘さんに勧められて一歩を踏み出し、ジム代という「予防への投資」を続けてきた結果です。

ROCKSの実証データ

ROCKSでは毎回のトレーニング後にInBody(体組成計)で測定を行い、会員様の体の変化を継続的に記録しています。158名・3,307回の測定データを、慶應義塾大学の研究論文で統計的に分析しました。

その結果、ダイエット目的の会員様は平均約5kgの減量を達成しながら、筋肉量はほぼ完全に維持。

さらに、年齢によって減量幅の効果に差がなかったことが統計的に確認されています。「もう歳だから」というのは、データ上は根拠がないのです。

ROCKSで筋トレと食事管理を行えば、体は変わります。70代でも、50代でも、40代でもです。

病院に使うか、体を強くすることに使うか。同じお金です。

でも、10年後の自分に返ってくるものはまったく違います。

72歳の会員様は、娘さんに勧められて一歩を踏み出しました。

あなたにとっての「その一歩」が、今日であってもいいのではないでしょうか。

ROCKSでお待ちしております。まずはお気軽にお問い合わせください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和5年度 国民医療費の概況」(2025年10月公表)。国民医療費48兆円、65歳以上が約60%。
  • P4H Network (2025). “Japan’s Aging Crisis Pushes Health Insurance Premiums to Record Highs.” 75歳以上の医療費が国民医療費の41%に到達。
  • Duijvestijn M, de Wit GA, van Gils PF, Wendel-Vos GCW. “Impact of physical activity on healthcare costs: a systematic review.” BMC Health Serv Res. 2023;23(1):572. 運動習慣のある群は医療費が9.0〜26.6%低い。
  • Liu T, Yao Y, Yang Z, et al. “The crowding-out effect of physical fitness activities on medical expenditure in the aged group.” Front Public Health. 2024;12:1425601. 60〜80歳で運動が医療費を有意に削減。
  • Active Lives South Australia (2021). 運動ガイドライン達成者は年間A$1,393の医療費削減。
  • ACE Fitness. “The High Cost of Inactivity.” 米国で運動不足が年間$117B(約17兆円)の医療費負担。運動する成人は年間約$1,500の医療費削減。
  • Edwards JJ, et al. “Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials.” Br J Sports Med. 2023;57(20):1317-1326. 270件RCT統合、筋トレで収縮期血圧-4.55mmHg。
  • Claudino JG, et al. “Strength Training to Prevent Falls in Older Adults: A Systematic Review with Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.” J Clin Med. 2021;10(14):3184.
  • 厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」(2024年)。介護保険費用11.5兆円。