こんにちは。ROCKSの澤村 英希です。
トレーニングに関する海外を中心とした研究論文と、ROCKS会員様の実データをエビデンスとしたブログを発信しています。少し長くなりますがご覧ください。
お金を使うとき、その使い方には二つの種類があります。
ひとつは「消費」。
使ったらそれで終わり。食事、娯楽、嗜好品。楽しいけれど、何も残らない。
もうひとつは「投資」。
使ったお金が新しい価値を生み出し、将来にわたってリターンをもたらし続ける。
株式、不動産、教育、スキルアップ。使った以上のものが返ってくる。
パーソナルトレーニングに払うお金は、どちらでしょうか。
答えは明確です。
パーソナルトレーニングは、間違いなく「投資」です。しかも、人生で最もリターンの大きい投資のひとつだと考えています。
今日はこの話を、経済学の理論と研究データで裏付けてみたいと思います。
「健康は資本である」― 経済学が証明した概念
1972年、経済学者マイケル・グロスマンは画期的な論文を発表しました。
「健康は消費財であると同時に、投資財である」という理論です(Grossman, 1972)。
グロスマンは健康を「資本ストック」として捉えました。
つまり、健康は株式や不動産と同じように「資産」であり、時間の経過とともに減価(劣化)するが、投資(運動、食事管理、医療)によって維持・増加させることができるという考え方です。
これを数式で表すとこのようになります。
H_t = H_{t-1} − δ × H_{t-1} + I_t
H は健康資本(ここでは筋肉量)、t は時点(今月、来月といった時間の区切り)、δ(デルタ)は減価率、I は投資(トレーニング)です。
何を言っているか。
「来月の自分の体(H_t)は、今月の自分の体(H_{t-1})から、何もしなければ自然に減る分(δ × H_{t-1})を引いて、トレーニングで増やした分(I_t)を足したもの」。ということです。
この式が教えてくれることはシンプルです。
投資(I)がゼロなら、体は毎月減価していく一方、投資が減価を上回れば、体は強くなっていく。
つまり、トレーニングをするかしないかで、来月の自分の体が決まる。
これは経済学の理論ですが、わたしが現場で毎日見ている光景そのものです。
わたしの著書でも触れていますが、筋トレとは「体という資産に対する投資行為」なのです。
使ったお金は消えるのではなく、筋肉という形で体に蓄積される。
そしてその筋肉が、基礎代謝の維持、転倒予防、生活習慣病のリスク低減、メンタルヘルスの改善という「リターン」を、毎日、何年にもわたって生み出し続ける。
これが「消費」と「投資」の決定的な違いです。
筋肉は「減価する資産」― だからこそ投資が必要
グロスマンモデルで重要なのは、「健康資本は放っておくと減価する」という点です。
実際、40歳以降、何もしなければ年間約1%の割合で筋肉量が減少していきます(サルコペニア)。
これはまさに「資産の減価」です。
筋肉が減れば基礎代謝が落ち、太りやすくなり、転びやすくなり、病気のリスクが上がる。
健康資本がどんどん目減りしていく。
わたしが慶應義塾大学の研究論文で分析したROCKSのデータは、この理論を実証的に裏付けています。
158名・3,307回の月次パネルデータを一階差分モデルで分析した結果、筋肉量モデルの定数項はβ₀ = +0.119(p < 0.01)でした。
p値とは「この結果が偶然である確率」のことで、0.01未満ということは「偶然ではなく、99%以上の確率で意味のある結果」ということです。
つまり、パーソナルトレーニングを継続している状態では、月に約0.12kgの筋肉増加トレンドが確かに存在する。
グロスマンモデルに照らせば、トレーニングという「投資」が、時間経過による「減価」を上回っているということ。
つまり、投資のリターンがプラスであることが統計的に確認されたのです。
さらに、セッション回数が増えるほど体重は減り(p < 0.001)、体脂肪率は下がり(p < 0.05)、筋肉量は増える(p < 0.01)。
この効果は個人の体質やモチベーションの差を統計的に除去した上でも一貫していました。
筋肉は放っておけば減る資産。
しかし、投資を続ければ増やせる資産でもある。どちらを選ぶかは、お金の使い方次第です。
消費は消える。投資は残る。
食事、娯楽、嗜好品。どれもその瞬間は楽しいし、満足感があります。
お金は消える、しかし自分自身は何も変わっていない。
これが「消費」です。月にいくら消費しているでしょうか。
ROCKSに週1回通うと、月に約30,000円。
それが数ヶ月後には、筋肉量が増え、体脂肪率が下がっている。基礎代謝が上がっている。血圧が改善している。睡眠の質が上がっている。
その効果は、翌年も、10年後も体に残り続ける。自分自身は何も変わらないお金と、体が変わるお金。
これが「消費」と「投資」の違いです。
アメリカのデータでは、運動習慣のある成人はない成人と比べて年間約1,500ドル(約22万円)の医療費が少ないという報告があります。
また、アメリカの医療費全体の8.7%にあたる年間約1,170億ドル(約17兆円)が運動不足に起因する疾病コストだとされています(ACE Fitness)。
オーストラリアの研究では、運動ガイドラインを満たしている成人は年間一人あたり約1,393豪ドル(約13万円)の医療費が少ないことが報告されています(Active Lives South Australia, 2021)。
ジム代に投資したお金は、将来の医療費を減らすという形で返ってくる。
さらに、体力の維持、見た目の改善、メンタルの安定、仕事のパフォーマンス向上という形でも返ってくる。
投資は複利で効く ― 体作りも同じ構造
投資の世界で最も強力な力は「複利」です。
元本が利息を生み、その利息がさらに利息を生む。
アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだとも言われるこの仕組みは、時間をかけるほど加速度的にリターンが膨らんでいきます。
わたしの著書でも「体作りは複利で効く」と書きました。これは比喩ではなく、実際に同じ構造を持っています。
筋肉がつくと、基礎代謝が上がる。
基礎代謝が上がると、安静時でも脂肪が燃えやすくなる。
脂肪が減ると、体が軽くなってトレーニングの質が上がる。
トレーニングの質が上がると、さらに筋肉がつきやすくなる。
これが「体の複利」です。
最初の投資(トレーニング)が生んだリターン(筋肉)が、次のリターンをさらに大きくする。
好循環が回り始めると、同じ努力量でも得られる成果がどんどん大きくなっていく。
逆に、投資をしなければ「逆複利」が働きます。
筋肉が減ると代謝が落ち、代謝が落ちると脂肪がつきやすくなり、脂肪がつくと体が重くなって動かなくなり、動かないとさらに筋肉が減る。悪循環です。
リバウンドを繰り返す人の体の中で起きているのは、まさにこの逆複利です。
ROCKSの論文データもこの構造を裏付けています。
トレーニング効果は「収穫逓減(ていげん)」の構造を持っており、初期の1年が最も大きな変化をもたらします。
つまり、最初の一歩が最もリターンが大きい。
早く始めれば始めるほど、複利の恩恵を長く受けられる。金融投資と同じです。
月1万円を年利5%で20年間積み立てれば、元本240万円に対して約411万円になる。171万円は複利が生んだリターンです。
体の投資も同じ構造です。
今月始めたトレーニングの効果は、来月、来年、10年後と積み上がり続ける。しかも体の投資には暴落リスクがない。
正しく続ければ、ほぼ確実にリターンが得られます。
この好循環は、最初の投資をした人だけが享受できるリターンです。
なぜ人は「消費」を選んでしまうのか
ここまで読めば、ジム代が投資であることは理屈として理解できるはずです。
しかし、多くの人は投資よりも消費を選びます。なぜか。
これもわたしが著書で触れた「時間割引率」の問題です。
人間は、将来の価値を現在の価値よりも低く見積もる傾向があります。
「半年後に引き締まった体」よりも「今日のケーキ」の方が魅力的に感じてしまう。
「10年後の健康」よりも「今の誘惑」にお金を使ってしまう。
経済学ではこれを「時間割引率が高い」と表現します。
将来の価値を大幅に割り引いてしまうために、長期的にはリターンの大きい投資よりも、目の前の消費を優先してしまうのです。
しかし、健康資本は株と違って暴落のリスクがありません。
正しいトレーニングと食事管理を続ければ、ほぼ確実にリターンが得られる。
しかもそのリターンは金銭だけでなく、体力、見た目、メンタル、生活の質という形で返ってくる。
これほどリスクの低い、リターンの確実な投資先が他にあるでしょうか。
ROCKSの実証データ
ROCKSでは毎回のトレーニング後にInBody(体組成計)で測定を行い、会員様の体の変化を継続的に記録しています。158名・3,307回の測定データを統計的に分析しました。
ダイエット目的の会員様は、平均約5kgの減量を達成しながら、筋肉量はほぼ完全に維持(+0.05kg)。体重1kg減少あたりの筋肉減少率は約12.6%で、運動なしのダイエットで報告される20〜26%の約半分でした。
そして年齢や初期の体脂肪率によって効果に差がなかったことが統計的に確認されています。30代でも、40代でも、50代でも、60代でも。
投資を始めるのに遅すぎるということはありません。
お金を使うなら、消えていく消費よりも、体に蓄積される投資を。
わたしはそう考えて、自分自身もトレーニングを続けていますし、会員様にもお伝えしています。
あなたの体は、あなたが一生付き合っていく唯一の資産です。
その資産に投資するかどうかは、あなた次第です。
「でもジムなんて行ったことないし」「筋トレのやり方がわからない」。そう思われる方にこそ来ていただきたいのがROCKSです。
筋トレ初心者の方でも、どこよりもわかりやすく、丁寧に、優しく、そして楽しく体作りをサポートします。
それでは、ROCKSでお待ちしております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
参考文献
- Grossman M. “On the Concept of Health Capital and the Demand for Health.” Journal of Political Economy. 1972;80(2):223-255.
- Anderson ND, Grossman M. “Health and Human Capital.” In: Kaestner R, Schiman C, eds. The Oxford Handbook of Health Economics. 2009.
- Fu R, et al. “Lifestyle factors and health-related investments based on the Grossman model.” Front Public Health. 2016.
- ACE Fitness. “The High Cost of Inactivity.”
- Active Lives South Australia (2021).
- Health & Fitness Association (2025). “New Research Highlights the Global Potential of Affordable Fitness.”
- Empower (2026). “Americans to spend $60 billion on fitness in 2026.”
- 澤村 英希(2022).37歳で筋トレ始めたら人生で初めて腹筋割れました
